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東京高等裁判所 平成元年(行ケ)78号 判決

一 請求の原因一(特許庁における手続の経緯)及び二(審決の理由の要点)の事実は、当事者間に争いがない。

二 そこで、原告主張の審決の取消事由の存否を判断する。

1 本願防護標章が別紙第一に示されているとおりのものであることは、当事者間に争いがない。また、成立に争いない甲第二号証の一によれば、本件登録商標は別紙第二に示されているとおりのものであることが認められる。

そこで、両者を対比してみると、両者は共通のローマ字一二文字を横書きして成る点において基本的な構成が同一であるが、本願防護標章が一二文字すべてを大文字で構成しているのに対し、本件登録商標は「M」と「B」を大文字、他は小文字とし、しかも全体をダブルクオーテーシヨンマークでくくつて構成している点において、両者の間に差異があることは明らかである。

2 そこで検討するに、防護標章登録を受け得る標章が「登録商標と同一の標章」に限られることは、商標法第六四条が規定するところである。

原告は、防護標章とその基となる登録商標は微細な点に至るまで同一である必要がなく、同一の範囲の判断は弾力的になされるべきであると主張する。しかしながら、防護標章の制度は、商品混同を生ずるおそれがあることを要件として、登録商標の禁止的効力をその指定商品の非類似商品にまで拡大させるものであるから、登録商標の標章と同一の標章、すなわち登録商標の標章そのものでない限り防護標章登録を受け得ないことは、制度の前記趣旨からして当然というべきである。ただし、この点について、商標法は、第七〇条第一項に「第六四条における「登録商標」には、その登録商標に類似する商標であつて、色彩を登録商標と同一にするものとすれば登録商標と同一の商標であると認められるものを含むものとする。」との規定を設けている。この規定は、要するに、標章の構成要素のうち色彩についてのみ同法第六四条に規定する同一性の要件を緩め、標章の構成要素のうち色彩のみが登録商標と同一でないが色彩を登録商標と同一にするならば登録商標と同一となる標章は例外的に防護標章登録を受け得るものとしたものであるから、標章の構成要素のうち「文字、図形若しくは記号若しくはこれらの結合」については、それがいかに登録商標に酷似する標章であつても、登録商標の標章と同一でない限り防護標章登録を受け得ないことは疑いの余地がないのである。

この視点に立つてみると、本願防護標章の文字と、本件登録商標の文字及び記号の結合との間に、外観上明らかな差異があることは前記のとおりであつて、本願防護標章が本件登録商標と「同一の標章」でないことはいうまでもない。したがつて、本願防護標章は商標法第六四条に規定する要件を具備しないとした審決の判断に誤りはない。

3 この点について、原告は、防護標章の登録が登録商標と厳格に同一の標章についてのみ許されるとすると、周知著名な本件登録商標と極めて類似する別紙第一の標章について第三者が第二〇類を指定商品とする商標登録出願をしても本件登録商標の禁止的効力が及ばず不当であると主張するが、そのような商標登録出願の排斥は商標法第四条第一項第一五号の規定の適用の問題であつて、原告の右主張は同法第六四条の規定の同一性の解釈とはかかわりのない事項というべきである。

念のため付言するに、原告が本件登録商標に類似する標章について禁止的効力を望むならば、連合商標の登録出願の途を選ぶべきであつて、これを防護標章の登録によつて解決しようとするのは筋違いといわなければならない。ただし、連合商標は、登録商標に係る指定商品又はそれに類似する商品についてのみ禁止的効力が及ぶのであるから、結局、登録商標に類似する標章の禁止的効力を、登録商標に係る指定商品の非類似商品にまで拡大させること(本願防護標章の登録出願はこれを企図するものにほかならない。)は、商標法が許容していないところというべきである。

三 よつて、審決の違法を理由にその取消しを求める原告の本訴請求は失当としてこれを棄却する。

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